INTERVIEW ジャンプラ読切沼のわたしたち

「二択で第三の解を出す」と
「制約と誓約」をオートでやっちゃう
佐伯ポインティは、読切も邪道がお好き。

今年で誕生から10周年を迎える「少年ジャンプ+」。そんなアニバーサリーイヤーを祝して、特別インタビュー企画「ジャンプラ読切沼のわたしたち」が絶賛開催中です。

ジャンプラ読切の魅力にどっぷりはまって抜け出せない、7名の漫画好きの著名人にオススメのジャンプラ読切をセレクトしてもらい、その魅力を存分に語っていただく本企画。第2回となる今回は、日本随一の“猥談”の語り手であり、大の漫画好きとしても知られる佐伯ポインティさんが登場!

ご自身のことを「友情・努力・勝利のタイプじゃない」と語るポインティさんの、少し特殊な漫画遍歴から読切作品に目覚めるまで。たっぷりと語っていただきました。

マルチタレント
佐伯ポインティ
マルチタレント。早稲田大学文化構想学部卒業後、株式会社コルクで漫画編集者として活動し、独立。猥談バーをオープンしたり猥談YouTuberとして活動するほか、「生き放題ラジオ」をPodcastで配信中。

全然「友情、努力、勝利」のタイプじゃない

記憶のなかでもっとも古い漫画体験を教えてください。

幼い頃、親の転勤で海外に住んでいた時、近所に自分と同じような駐在家庭の子どもたちがたくさんいたんです。そのなかでも小学校高学年や中高生のお兄ちゃんたちが日本の漫画をいっぱい持っていて。『遊☆戯☆王』(高橋和希、集英社)『ONE PIECE』(尾田栄一郎、集英社)『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博、集英社)など、有名どころを借りてよく読んでいました。

海外に住みながら日本の漫画が読める環境だったと。

これ、子どもあるあるだと思うんですけど、1巻からではなく途中の巻から読むんですよ。『ONE PIECE』はお兄ちゃんが貸してくれた巻から読み始めたので、初っ端からルフィがクロコダイルと戦ってて(笑)。『HUNTER×HUNTER』もヨークシンシティ編から読んでましたが、やっぱり歯抜けでも面白いんですよね。絵もかっこいいし。それが漫画体験の原始の記憶です。

単行本がメインで『週刊少年ジャンプ』は通らず?

『週刊少年ジャンプ』は、日本に帰国した時に空港で初めて読みました。たしか遊戯が表紙でそれに惹かれて買ったんですけど、ちょうど『遊☆戯☆王』の後半の展開が載っていて、「え? 城之内君死にそうじゃん!?」と衝撃を受けたことを鮮烈に覚えてます。それと同時に「あ、これが先で単行本が後なのか」って、漫画雑誌の存在と単行本との関係を体感で理解しました(笑)。

カルチャーショックの逆輸入ですね。そこからどのような漫画遍歴を辿ったのでしょう?

中学生になると自分でお金を出してじっくり漫画を読みたくなって、お小遣いやお昼代のおつりを駆使して漫画を買うようになりました。学食で一番安い素うどんを食べて、その差額で漫画を買うみたいな。

ランチ代を節約してまで手に入れたい漫画があったということでしょうか。

どうだろう。でも、『シャーマンキング』(武井宏之、講談社)は発売日に書店に駆け込んだりして、めっちゃ頑張って集めてました。昔から本が好きだったこともあって、所蔵欲をそそられたんだと思います。

どんな所に魅力を?

葉(主人公)のゆるい感じが好きだったんです。シャーマンキングになりたい頑張り屋さんが多いなかで、葉は主人公なのに「俺がやるしかないのかな〜〜」みたいにすごく消極的で。

『ONE PIECE』はもちろん、『NARUTO -ナルト-』(岸本斉史、集英社)など、当時のジャンプは夢や希望に溢れるアツい主人公が多かったように思います。

そうなんですよ。何かになりたい主人公が多いなかで、葉は宿命的にシャーマンキングになるしかない。気が向いてないけどやるところに、「すごく分かる」って共感しながら読んでいました。

王道ではない主人公に魅力を感じたと。

自分自身が頑張り屋さんじゃないから、めっちゃ頑張って修行する、アツいキャラクターの気持ちがあまりわからないんです。それこそ全然、「友情、努力、勝利」のタイプじゃない(笑)。あと、王道よりも奇策で何とかしたい性格なので、葉は主人公の像としてすごく好きでした。そういえば『DEATH NOTE』(大場つぐみ・小畑健、集英社)も夜神月がジャンプっぽくなくて良かったなぁ。

たしかに「友情、努力、勝利」の作品ではないですね。

『DEATH NOTE』は大学受験の前に一度読んでいたんですけど「複雑だな」って感じであまり話を理解していなかったんです。で、受験まで残り3ヶ月くらいの時にそれこそ奇策じゃないですけど、瞑想をしたり、ちょっと特殊な方法で受験勉強をしていて......。

瞑想!?

受験まで時間がなかったから普通の方法じゃダメだと思って、瞑想することで睡眠時間を取った気にさせたり、ベニヤ板で作ったボックスに本や漫画を封印したり……。とにかく短い期間でぐっと勉強して受験を終えたんです。それから『DEATH NOTE』の続きを読んだら、急激に偏差値を上げたからか「めっちゃ分かるぞ!?」ってなって。

思わぬ副産物が……。

ようやく物語の複雑さが分かったというか、『DEATH NOTE』ってこんなに面白かったんだ! と感激したのをよく覚えています。

ポインティさんのイメージ的に、てっきり恋愛漫画が出てくると思っていたので、ここまでの意外なラインナップに驚いています。

漫画にあまりキュンキュンは求めていなくって。でも恋愛系だと古谷実作品が好きでよく読んでいました。一番好きなのは『グリーンヒル』(古谷実、講談社)です。

古谷実作品のどんな所が刺さったのでしょうか?

まずはギャグのワードセンスがすごいのと、あと古谷実作品によくありがちな、ダメダメな主人公が急に意味不明な理由で美人に好かれる展開……。それがすごくリアルなタッチで描かれているので、もしかしたら本当に起きるかもよ?って青年読者に希望を見せてくる姿勢というか。毎日を自分らの範囲で面白くしていこうよ! みたいなテンションが大好きです。

少年誌から青年誌まで幅広い漫画作品の名前が上がりましたが、ポインティさんが人生で一番影響を受けた作品はなんですか?

『HUNTER×HUNTER』です!! 複雑な価値観や道徳観を内包しているけど、それを分かりやすく提示してくれる作品で、それこそ少年誌と青年誌の橋渡しじゃないですけど、その間を繋ぐのが『HUNTER×HUNTER』だと思っています。

少年誌と青年誌の橋渡し、言い得て妙ですね。

この作品の考え方で一番好きなのが、AかBかを問われた時にCを出すところ。思考停止して限られた答えのなかから決断するんじゃなく、問題の本質や裏側を見抜いて自分なりの答えを導き出す。それがすごく面白いんですよね。

「ドキドキ2択クイズ」でAかBのどちらかを選ぶのではなく、沈黙が答えだと導き出すシーンがありましたね。

あと「制約と誓約」も色々な物事の考え方としてすごく分かりやすいじゃないですか。人は限られたリソースのなかで生きていかなければいけない、それならどこに制限を課すのか?って。「AかBかを問われた時にCを出す」と「制約と誓約」。この二つは、もう無意識下に沈澱していると言っていい考え方です。

たしかに実生活でも応用できそうです。

こうして振り返ると、『HUNTER×HUNTER』のように色々な人の多様な考え方が集まっている漫画が好きなんだと思います。最近だと『呪術廻戦』(芥見下々、集英社)にも同じようなものを感じます。呪術師もハンターも固定概念がなくて、「俺は呪術師はこういうものだと思ってる」みたいな感じで各々のキャラクターが動く。職業観念が人によって異なるところが大人だなって。

そういった漫画は何度読み返しても新たな発見がありそうです。

たしかに。そういえば、読み返す漫画と読み返さない漫画ってありますよね。これ、漫画編集者の仕事をしてた時、業界に代々伝わる名言として知った言葉なんですけど、「漫画は魂の食い物」なんだと。

魂の食い物!?

魂ちゃんが食べるごはんってことですね。昔よく食べていた食堂の“思い出の味”がまた食べたくなるように、自分が幼い頃や学生時代に影響を受けた作品は忘れられないし、またあのキャラに会いたいなって読み返したくなる……。そういう作品は読み返す度に刺さるポイントが変化しているのも良いですよね。

お話を伺っていると、漫画を読む時はかなり集中されているように感じたのですが、普段どういった環境で読書されているのでしょうか?

移動中か寝る前ですね。面白い作品と出会った時は電車を乗り過ごすし、つい夜更かししちゃうこともあります(笑)。

ポインティさんが遅刻する時は、面白い漫画を読んでいたと……。

でも、本当に面白い作品ってこちらの世界の質量を掴んでくる感じがしません? 境界線をオーバーしてきて、作品の世界に引きずり込まれていくあの感覚。その瞬間がすごく幸せだし、人生の幸福のひとつだと思います。

「少年ジャンプ+」は作家にとっての“良い出身校”

「少年ジャンプ+」と出会ったきっかけを教えてください。

Xで流れてきた読切を読んだのがきっかけです。それから「少年ジャンプ+」で『週刊少年ジャンプ』の定期購読が出来ると知り、「発売日の0時に読めるの良いな〜」と思って登録して……という感じなので、利用歴としては結構長いですね。

定期購読は2014年の創刊当初からある機能ですよね。読切という漫画形式にはどんな印象をお持ちですか?

読切って“デビュー作”でもあると思ってて。漫画に関わらず、小説家や映画監督のデビュー作がすごく好きなんです。作家が一番最初に個性を表現する場なので、その人の良さや特徴が色濃く出ているし、今世の中で支持されているものを横目に「自分はこういう作品が好きなんだよ」ってスッと通るみたいな。そんな気概を感じられるところが好きです。

なるほど。

デビュー作は、パッケージングされた状態で世に出るけど、漫画ってそのもう一段階前の作品として読切があるじゃないですか? でも、その時点で個性が突出していて、記憶に残る強烈な作品もある。そこが読切の面白いところですよね。だから、読切をきっかけにその漫画家さんを追うみたいなこともよくします。

それは過去に漫画編集者だったからなのか、それとも元々デビュー作フリークなのかでいうと?

元々好きなんです。漫画以外だとKADOKAWAの日本ホラー小説大賞がすごく好きで、必ずチェックしてました。……なんか「賞」って良くないですか?

それは「賞」って響きが?

年末に多くの人が『M-1グランプリ』に熱狂するように、多分皆さんも「賞」が好きだと思うんです。賞を取ると状況が一変する。その“称号を得る”ってこと自体がドラマチックじゃないですか? 「少年ジャンプ+」だと藤本タツキ先生やタイザン5先生みたいに読切でいきなり世に打って出て、鮮烈にデビューを飾るあの感じ。すごく良いですよね。

世の中に漫画賞や読切が数多く存在するなかで、ジャンプラ読切の魅力は何だと思いますか?

うーん、やっぱり「少年ジャンプ+」がすごいからかな……。ジャンプラだから! みたいな理由になっちゃったけど(笑)。まず、「少年ジャンプ+」は藤本タツキ先生やタイザン5先生のような作家を輩出したことで、“打って出たい人が集まる場”になっていると思うんです。例えるなら、作家にとっての “良い出身校”みたいな。その分、入学希望者が増えてるだろうから、ピラミッドのボスがかなり大きな存在になって一層頂点が輝いて見える。だからこそ、時には残酷なこともあるかもしれないけど、今の「少年ジャンプ+」は『M-1グランプリ』のように夢のあるピラミッドを作れていると思います。

気鋭の作家の出身校であり、『M-1グランプリ』のような熱狂と夢がある場だと。

それをWEB上で確立できたことはもちろん、作家と作品をしっかり輩出し続けていることがすごいですよね。それでいて、10周年なのに古びた感じがなく、ずっとフレッシュなイメージがある。「少年ジャンプ+」には裏打ちされた研鑽を感じます。食べ物に例えるなら、普段から美味しいものを食べているけど、新しいものや一味違うものを食べたいって時、期待を裏切らずに必ず出会える。それがジャンプラ読切だと思うんです。

「少年ジャンプ+」では数多くの読切が公開されていますが、どうやって作品を発掘しているのでしょうか?

Xで感想ポストを見かけて読むパターンが多いですね。別に感想がバズっていなくても、こう“呆然としている人”がたまにいるんですよ。

呆然としている人……

ただ一言「すごい作品だった」とか「何だこれ......面白......」って呟いている人、いますよね? そういう呆然としている人がいるってことは、それくらい何か圧倒するものがある面白い作品なんじゃないかと。

たしかに本当に面白い作品と出会った時は、まず「すごい」が出てくる気がします。

シンガー・ソングライターの崎山蒼志くんの才能が『日村がゆく』で見つかった時の動画がめっちゃ好きで。あの途方もない才能を持つ者と出会った時の周りの反応……。日村さんが急にモブみたいに「これ本当に君が考えたのか!?」と言ってしまうくらい、動揺しているというか(笑)。それくらい急にすごいものを見た時って、圧倒されてただ呆然としてしまうものなんですよね。

“呆然としている人”きっかけで読むジャンプラ読切は、やっぱり満足いくものが多いですか?

クオリティ高いなと感じるものが多いですね。それはジャンプラ読切だけではなく、「ジャンプルーキー!」の作品だったりすることもあります。特に『無人島に1つ持っていくなら』(空路蛇行性)はコマ割りや絵のセンスがすごく高くて、「もうすげえ!」って思いました。同じ作者がひとつ前に発表した『砂漠のごちそう デザート・デザート』も好きでした。これは、「2024年2月期ブロンズルーキー賞」を受賞して「ジャンプルーキー!」からジャンプラ読切に進出しています。

友達に一番布教した読切

今回、ジャンプラ読切からポインティさんオススメの3作品をセレクトしていただきました。中田春彌『アウトオブドラゴン』、菱田すみ『免許取るならオートマでいいよ』、サクラミナト『3つの願い』というラインナップになっていますが、これらを選ばれた理由は?

まず、『アウトオブドラゴン』は一言で表すと“超おもろい漫才”。お笑いは「緊張と緩和」が大切だとよく言われるけど、この作品はファンタジーでそれをやってるんです。2人の剣士が巨大なドラゴンと遭遇するという危機的状況から始まるのに、次のページをめくると急に「お前……俺を見下してるよな」と。「あ、これそういう話なんだ!?」って驚きました(笑)。

冒頭からくらう感じがありますね。

読切は一番最初に「これはどういう話なのか?」を読者に提示できるかどうかが重要だと思うんだけど、『アウトオブドラゴン』は最初の2ページで掴んできますよね。『ゲーム・オブ・スローンズ』みたいなタイトルロゴに、「巨大な竜の元でぶつかる小さな小さな自尊心!」っていう煽りも良い。本当に素晴らしい一枚絵だと思います。

『アウトオブドラゴン』(©中田春彌/集英社)

煽りは漫画好きならではの着眼点ですね。

読切に限らず、漫画の煽りを読むのが好きなんです。心に残っている煽りってありませんか? 例えば『ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン』(荒木飛呂彦、集英社)最終話の「引力、即ち愛(ラブ)!」とか。

(笑)。

煽りは単行本には収録されないから、それこそ連載を読んでいる人の楽しみでもあるのかなって。その点、ジャンプラ読切だといつ読んでもこうして煽りが楽しめるから良いですよね。……でも、煽りって考えるのが本当に難しいんですよ。作品愛を伝えたいけど、上手い補助線も引かないといけない。漫画編集者時代にめっちゃ苦戦した記憶があります。

なるほど。『アウトオブドラゴン』の2ページ以降の見どころは?

それ以降は、細かい“ファンタジーあるある”や“プライドあるある”が続くんだけど、後半にかけて起承転結の“転”の部分が最高なんです。新たに現れたもう1人の剣士が、目の前にいるドラゴンがめちゃくちゃ高く売れるやつだと気付き、さらに物語が転がっていく。もう予想をまんまと裏切られました。

本作のことを“超おもろい漫才”と表現していましたが、一番笑ったシーンは?

途中から現れた剣士がドラゴンを独り占めするために、主人公たちに「二人とも自害しようか」と言いだして。でもすぐに「今のは無理があった!」って一人で慌てているところ。このシーンは声出して笑いましたね。

たしかにこのシーンは傑作でした(笑)。

しかも、冒頭で主人公2人が「もしも希少なドラゴンだったらどうする?」みたいな会話をしてるんですよ。見事に伏線回収して一番最初に戻ってくるから、何だかすごく良いもの見たなって。面白い読切を読んだらすぐ友達にLINEするんですけど、トーク履歴を遡ったら一番人に送っていたのがこの作品でした。それくらい大好きです。

ギャグ、シリアス、SF、友情、それぞれのバランスが最高

『免許取るならオートマでいいよ』はいかがですか?

絵柄が可愛いので、女の子同士のほのぼのドライブ漫画かな? と思いきや、開始早々見事に裏切られるという(笑)。その後のマントを纏っている2人の姿が本当に面白くて、ここからもう目が離せなくなりました。

『免許取るならオートマでいいよ』(©菱田すみ/集英社)

急にさすらいの旅人みたいになっていましたね。

滅亡した世界で繰り広げられるシスターフッド×ロードムービーかと思ったら、急にギャグになるテンションも最高でした。その後もシリアス、SF、バトルと予想を裏切られる、かなり飛距離のある展開が続いていたり……。この作品って、ギャグ、シリアス、SF、友情といった、それぞれのジャンルのサンドイッチみたいになってて、そのバランスがめちゃくちゃ良いんですよね。

ジャンルのバランス。

最後もアツいバトル展開かと思いきや、冒頭のオートマとマニュアル免許の話が関わってきて「もう何だよそれ!」みたいな(笑)。全てがすごく良い塩梅です。

先ほどの『アウトオブドラゴン』でも“裏切られる”というワードが出ましたが、読切において興味をそそられる重要なポイントだったり?

最初に作品を読む時って自分の軌道みたいなものがあると思っていて、そこからツイストされたいというか、「え、そっちに転がっていくの!?」って自分の予想を裏切られたいんです。でも、その裏切りは客観性があって成り立つものだと思うんですよね。

具体的にどんなことを指していますか?

絵柄でストーリーを予測してしまうことってあるじゃないですか。例えば、『アウトオブドラゴン』はシリアスなファンタジーもの、『免許取るならオートマでいいよ』は、可愛い女の子のロードムービーものっぽいとか。

あぁ、読む前に絵柄でそうだと判断してしまう……

絵柄に対する自分の客観性を上手い具合に裏切ってくる。偶然ですが、今回選んだ3作品の共通点でもあるんです。

これは作家、編集者、読者の「打ち合わせ」!?

『3つの願い』には最初どんな印象を抱いたんですか?

『世にも奇妙な物語』っぽい怖くて不思議な話かなと。でもいざ読んでみると、どちらかと言えば“オタク君向け”の作品でした。良い意味で本当に「くだらねぇ〜!」って感じで最高(笑)。

爆笑しながら読み返していますが、イチオシのシーンはどこですか?

「あ セリフの続きか」って、悪魔のツッコミが時差で入るところです。この作品に登場する3人って、立場的におそらく作家と編集者と読者なんですよね。ギルバートが作家、悪魔の首が編集者でMr.ブライトが読者。実際に彼らがやっているのは二次創作だけど、実は作家、編集者、読者の最小の関係を描いているというか、これってもう「打ち合わせ」なんですよ。

『3つの願い』(©サクラミナト/集英社)

あぁ、たしかに! だんだん白熱していきますし。

ギルバートがMr.ブライトに言う「作る側そこまで考えてないから」ってセリフは、作者のだるさというか、褒められて嬉しいけどいやいや……みたいなものが出ていて良いですよね(笑)。作者さんが自分の気恥ずかしい部分をすごく上手に出されているんだろうなと感じます。

そう言われると何だか見方が変わりますね。

とにかくこの作品は会話劇がめっちゃ面白いなって。あと、今回紹介した3作品に共通する話ですが、どれもラストはちょっと良い気分になれる。『3つの願い』なんて最後に「物語も現実もハッピーエンドが一番!」って煽りが入っていますからね。

ジャンプラならではの新たなメディアミックスに期待

ポインティさんの漫画遍歴から読切の魅力、そしておすすめのジャンプラ読切についてお話しいただきましたが、これからジャンプラ読切を楽しみたい初心者に向けてアドバイスするとしたらいかがですか?

ジャンプラ読切はもちろん作品自体面白いけど、やっぱり読み終わった後に人と感想を話すのも楽しい。友達に「これ面白いんだよ!」って共有して、感想を言い合うのも読切の楽しみ方のひとつだと思います。だから面白い読切と出会ったら、ぜひ友達に送ってみてほしいですね!

コメント欄やXに流れてくる感想を読むのとはまた違う?

それも良いけど、やっぱりコメントやいいね数、ビュー数では測れないものがあると思うんですよね。例えば、この作品をどう読んだのか? どう楽しんだのか?……それは人と人が会話をすることで伝わるものだと思うので、友達に送るのをお勧めします。

先ほど、ポインティさんも面白い読切を読んだらすぐ友達にLINEすると言ってましたもんね。

あまりにも面白い作品と出会うと、勝手に「え、人類で読んでない人いないよね!?」みたいな気持ちになっちゃうんですよね(笑)。ところが、どんなにバズっている作品も、送ってみると意外と読んでいない人が多い。ほら、どんなに『M-1グランプリ』が盛り上がっていても観てない人は観ていないじゃないですか。それと同じです。

では最後に、10周年を迎えた「少年ジャンプ+」に今後期待することを聞かせてください。

まずは作家にとって“良い出身校”であり続けることに期待したいのと(笑)。あとは凄い数のあるジャンプラ読切を資産と考えて活かすと、新たなメディアミックス展開ができて面白いんじゃないかと。例えば『ロッカールーム』(鈴木祐斗、集英社)が『世にも奇妙な物語』でドラマ化されたり、最近だと『ルックバック』(藤本タツキ、集英社)も短編映画化されましたよね。

どちらも大きな話題になりました。

漫画原作のアニメ化、実写化はすごく遠いステップの先にあるイメージだったけど、そういった従来の手堅いメディアミックスとはまた違う……例えば、ジャンプラ読切を色々な映像クリエイターや映画監督とタッグを組んでショートドラマ化したら、すごく話題性もあるだろうし、結果的に面白いものに出会う人の分母も増える。「少年ジャンプ+」を良い読切やアイディアが集う場所として捉えて、そんな新たな取り組みが実現できたら面白いなと思います。

取材・文:ちゃんめい 撮影:持田薫
編集:野路学(株式会社ツドイ)

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